【日記】ラッキーとの距離

 中学校に入学したとき、それまで同じ環境にいた小学生はひどく幼く見えて、逆に高校生は別の生き物くらい大人に感じた。

 でもいざ自分が高校生になっても実感はなくて、今まで通り年下は子供に、年上は大人に見えるだけだった。

 大学2年生になった今でも、僕は中学1年生のときから何も変わっていないような気がしてしまう。

 内側から変化を見るのは難しい。気付くためには、自分の外に基準をつくって照らし合わせないといけない。

 誕生日やお正月みたいに、去年の自分との変化を実感できるイベントはいくつかあるけど、ここ数年の僕にとっては、羽賀翔一さんの個展が何より大切な場所になっている。


 このnoteは、僕が羽賀さんの個展を通じて活力をもらえた、という趣旨の日記です。

 基本的に自分のモチベーションのために書いたものですが、間違ってオープンパーティに参加してしまったくだりはちょっと面白いと思っているのでよければ読んでみてください。


 僕が初めて羽賀さんの存在を知ったのは、マンガアプリGANMAで『ケシゴムライフ』を読んだときだった。

https://hagashoichi.com/comics/keshigomu_life

 LINEの記録によると、高校2年生のときに友達から勧められて読んだみたいだった。その友達はすでにLINEの公式アカウントをフォローしているくらいのファンで、僕が読む前からスクリーンショットで名場面を送ってくれていた。

 自分の友達にいた気がするくらい、すべてのキャラクターが親近感と愛嬌にあふれていて、僕もすぐにファンになった。

 調べているうちに佐渡島さんやコルクさんの存在も知り、小説家を目指していた僕は「佐渡島さんって人のnoteを読むと文章が書けるようになる気がする・・・!」と思ったりしていた。


 それから1年が経ち、羽賀さんの個展が開催されることを知った。

 「根津カレーラッキー」というお店の中で展示されるというのも粋だと思った。

 めちゃくちゃ行きたかったけど、僕は関西に住んでいたし、部活もあったし、受験生だったので、インターネット越しに眺めるしかできなかった。

 ちなみにその頃、僕はたくさんの小説を書いては応募し、同じ回数落選していた。

 

 そこからさらに一年が経ち、僕は晴れて千葉の大学生となった。

 羽賀さんの個展『ぼくたち』が開催されることを知り、今年は絶対行かねばと思ってツイートのスクショを撮った。

 個展の第1日目が8月4日で、しかもその日は東京に行く予定があった。

 初日なら羽賀さん本人がいる可能性も高いだろうし、あわよくばサインをもらおうと思って、カバンの中に『ケシゴムライフ』と『昼パパ』を入れて当日を迎えた。

 個展の開催時間は19:00までで、僕の予定が終わるのが18:00だったので、滑り込みでなんとか間に合うだろうと踏んでいた。

 お昼の時点で、羽賀さんがラッキーにいてサインもしているとのツイートを発見した。

 まだ在廊していてくださいと祈りながら、根津駅で降りて、地図アプリでラッキーを検索し、少し歩くと看板が見えた。

 透明ガラスから見える店内は人で溢れていて、「やっぱり『君たち』の反響すごかったんやなー!すごい数のファンや・・・」と感動しながら店内に入った。

 受付にいた店主さんは羽賀さんのツイートに出てきた似顔絵そっくりで、実写化された映画の中にいる気分だった。

 カレーを食べながら鑑賞するものと思っていたので、前金で4000円というのはいくらか驚いたけど、まあこの人気なら当然かと納得した。

 受付を通ると、羽賀さんを発見した。

 いてくれただけでも嬉しいし、会釈したら返してくれて、すでに4000円の価値はあったなと満足だった。

 人で溢れていたので、座る場所も見つからず立っていると、誰かから「どちらの関係者の方ですか?」と聞かれた。

 関係者じゃなくてただのファンだと伝えると、どういうわけかめちゃくちゃ驚かれた。

 それから「羽賀さん、ファンの子ですって!!」と、なんと羽賀さんの隣の席に誘導してもらえた。

 脳内は混乱と喜びで大波乱だった。

 田舎から出てきた子供が、憧れのマンガ家の隣に座って冷静な思考なんかできるはずがない。

 周囲の驚きの反応についての疑問どころではなく、とにかく頭に浮かんだ言葉を喋り続けていた。


 しばらくして、異常値に全振りだった興奮メーターがギリギリ正常値に戻ってきた頃、
「最初僕が入ってきたときに驚く人が多かったんですけど、あれってどうしてなんですか?」
と聞いた。

 話によると、個展初日の一般参加は14:30までで、そこから始まる関係者パーティに僕は入ってしまったらしい。

 別にいても大丈夫だが、「一般の人も混ざれる」と思われると困るので、ツイートとかは控えてほしい、とのことだった。

 そんなミスがあるか!?

 本当だとしたらアホすぎないか!?

そう思ってスクショを確認した。

たしかに小さい字で書いてあった。

 入り口のドアにも「閉店中」の看板があったらしい。

「やらかした・・・」と思った。

 でもその1億倍「やったーー!!!!」と思った。

 こんな幸運を逃すわけにはいかんぜということで滞在させてもらい、本当に夢のような時間を過ごさせてもらえた。


 そんな夢のような場所、根津カレーラッキーで行われる羽賀さんの個展。

今年の展示『それから』ではなんと!

描き下ろしの絵に僕の似顔絵もいれていただいた!!


 間の一年にあった経緯をざっくり書くと、
個展『ぼくたち』のオープンパーティに間違って参加してしまう
⇨根津カレーラッキーの店主さんたちに仲良くしてもらう
⇨ラッキーで「ふむ会」が開催されることを知る
⇨ふむ会で、マンガ投稿サイト「コルクブックス」ではネームでも投稿できることや、コルクブックス講座の存在を教えてもらう
⇨コルクブックスに投稿、講座に参加させてもらう
⇨佐渡島さんに持ち込みさせてもらう
⇨マンガ仲間として扱ってもらう
という感じ。

 こんな光栄なことがあるだろうか?

 

 インターネット越しに眺めるだけだった場所に、翌年図々しくも間違いで参加させていただき、今年は展示作品の中に入れるようになった。

 マンガを描いていると、自分が前進しているのかわからなくなったり、表現より読む技術の方が先に上がって「自分のマンガがいかにクソか分かってしまう病」になったりする。

 そんなとき、自分がここ数年で間違いなく理想に近づいてきたという事実は心の支えになる。

 今の自分に満足しているわけではないけど、それでも昔よりはマシになっているし、明日はもっといいものが出来ると思えることは大切だ。

 憧れときっかけと居場所をくれた羽賀翔一さんの個展、根津カレーラッキーさんに感謝したい。

 ありがとうございます。

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今年の展示は8月16日までなので、まだの方はお早めに!

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僕が有名になった後「秋野ひろは俺/私が育てた」と公言できるようになります。

オマエ、イイヤツ
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秋野ひろ

マンガ家。描きたいテーマのアーカイブに使ってます。
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