『竹撮りの翁』(306字)
時は平成。竹取りの翁と呼ばれている者がおりました。野山に立ち入っては竹を取り、多くの竹細工を作っていました。
ある夕暮れのことです。翁は近いうちに誕生日を迎えるお婆さんの為に、上等な竹を探していました。切り倒した数本の竹を背負い、そろそろ帰ろうかと腰を上げたその時です。ふと前を見ると、なんとそこには光り輝く一筋の竹があるではありませんか。
翁はすぐにポケットからスマートフォンを取り出し、それを撮影しました。ツイッターへ投稿しようと思ったからです。撮った竹も綺麗でしたが、実物には到底及びません。翁はもう一度その竹を見ましたが、もう光ってはいませんでした。
シャッターは、一瞬の輝きを切り取ってしまったのです。
僕が有名になった後「秋野ひろは俺/私が育てた」と公言できるようになります。