『良 いなか』(1840字)
「ええ御守りやんか。祈年祭で売っとってもおかしくないくらいや。ありがとうな」
そう言って田沼先輩が笑った。無人精米機から出て来たばかりの上白米のような、輝くように白い歯を見せる。
「そんな…喜んでもらえて嬉しいです。受験、絶対合格して下さいね」
私は胸の前で両手を握った。先輩もそれに合わせて、ガッツポーズをしてくれる。それを見て、喉に餅が詰まったような気分になった。手をそっと胸に当てる。先輩の合格を願う気持ちは嘘じゃない。だけど、大学が決まれば先輩はこの村を出て行ってしまう。